卵巣がんステージ4とは?生存率・余命・症状・治療法(手術・維持療法・再発治療)をわかりやすく解説
卵巣がんステージ4の患者様とご家族の方へ
卵巣がんステージ4とは、卵巣にできたがんが、胸水の中や、肝臓・脾臓の内部、お腹の外のリンパ節や臓器など、離れた場所へ広がっている状態を指します。「ステージ4」と告げられ、「もう手遅れなのでは」「余命はどのくらいなのか」と不安を抱えてこのページにたどり着いた方も多いと思います。
最初にお伝えしたいのは、卵巣がんはステージ4であっても、抗がん剤がよく効きやすいがんだということです。国立がん研究センターの集計では、卵巣がんステージ4の5年生存率は27.8%で、ほかの多くのがんのステージ4と比べて高い数字です。手術と抗がん剤に加え、BRCA遺伝子などの検査結果に応じた「維持療法」が登場し、治療の選択肢はこの10年で大きく広がりました。
一方で、進行した卵巣がんは再発しやすいという現実もあります。がん免疫療法専門クリニックである日比谷内幸町クリニックが、卵巣がんステージ4の定義、生存率・余命の正しい読み方、手術・薬物療法・維持療法の流れ、再発したときの治療、腹水などの症状への対処、遺伝のことまで、わかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 卵巣がんステージ4がどのような状態か(4Aと4Bの違い、組織型による違い)
- 生存率・余命の数字と、その正しい読み方
- 手術・化学療法・維持療法の「3本柱」の治療の流れ
- BRCA遺伝子・HRD検査と維持療法の関係
- 再発したときの治療(プラチナ感受性・抵抗性)と新しい薬
- 腹水・胸水・腸閉塞などへの対処
- 遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)とご家族への影響
要点
- 卵巣がんステージ4は、胸水の中にがん細胞がある(4A)か、肝臓・脾臓の内部やお腹の外の臓器・リンパ節に転移がある(4B)状態です。
- 治療は手術・化学療法・維持療法の3本柱で、5年生存率は27.8%(2014〜2015年診断例)と、ほかのがんのステージ4より高い水準です。
- 進行卵巣がんは再発しやすい一方、再発しても治療を繰り返しながら長く過ごしている方がいます。
目次
- 卵巣がんステージ4とは【がんが腹部の外や臓器の内部へ広がった状態】
- 卵巣がんステージ4の生存率【5年27.8%】と数字の正しい読み方
- 卵巣がんステージ4の余命
- 卵巣がんステージ4は完治するのか
- 卵巣がんステージ4の主な症状
- 治療方針を決める検査(BRCA・HRD検査を含む)
- 卵巣がんステージ4の治療の全体像【手術・薬物療法・維持療法の3本柱】
- 手術(腫瘍減量手術)と術前化学療法
- 初回の化学療法(TC療法・ベバシズマブ)
- 維持療法(PARP阻害薬・ベバシズマブ)
- 再発した場合の治療【プラチナ感受性・抵抗性】
- 治療の効果はどのように判断する?
- 腹水・胸水・腸閉塞への対処【治療を続けるための支持療法】
- 遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)とご家族への影響
- 緩和ケアは診断時から受けられる
- 卵巣がんの最新治療と臨床試験
- 標準治療の効果が乏しくなった場合の選択肢
- 当院の卵巣がんステージ4に対する治療【高度活性化NK細胞療法プラス4種複合免疫療法】
- 診断されたら:主治医に確認したいこと・ご家族ができること
- 治療と生活:副作用・卵巣欠落症状・仕事・医療費
- 卵巣がんステージ4に関するよくある質問(FAQ)
- まとめ:卵巣がんステージ4は、治療で長く付き合える可能性のあるがんです
卵巣がんステージ4とは【がんが腹部の外や臓器の内部へ広がった状態】
卵巣がんステージ4(Ⅳ期)とは、がんが腹膜の表面(腹膜播種)を越えて、胸水の中や、肝臓・脾臓の内部、お腹の外の臓器やリンパ節へ広がった状態です。国際的なFIGO分類(日本産科婦人科学会が採用)では、ステージ4は「4A」と「4B」に分けられます。
卵巣がんは2023年に約1万3千人が新たに診断され、2024年には約5千人が亡くなっています。40代から増え始め、50〜60代に多いがんです。卵巣はお腹の奥にあり、初期にはほとんど症状がないため、診断時にはすでにステージ3・4まで進んでいる方が少なくありません。「気づけなかった」のは、あなたのせいではありません。
出典:国立がん研究センター がん統計(卵巣)/日本産科婦人科学会「卵巣がん」
ステージ4Aと4Bの違い
| ステージ | 状態 |
|---|---|
| ステージ1 | がんが卵巣(または卵管)にとどまっている |
| ステージ2 | がんが骨盤の中(子宮・卵管・骨盤内の腹膜など)に広がっている |
| ステージ3 | がんが骨盤の外の腹膜(腹膜播種)や、お腹の奥(後腹膜)のリンパ節に広がっている |
| ステージ4A | 胸水の中にがん細胞が見つかる |
| ステージ4B | 肝臓・脾臓の内部への転移(実質転移)、お腹の外の臓器への転移、鼠径リンパ節などお腹の外のリンパ節への転移がある |
出典:日本産科婦人科学会・日本病理学会『卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約』(FIGO 2014)/がん情報サービス「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん 治療」
注意:「腹膜播種」や「肝臓の表面への転移」はステージ3です
卵巣がんでは、がん細胞がお腹の中に種をまいたように広がる「腹膜播種」が最も多い広がり方です。他のがんでは腹膜播種は遠隔転移(ステージ4)として扱われることが多いのですが、卵巣がんでは腹膜播種はステージ3に分類されます。また、肝臓や脾臓の「表面」への転移はステージ3、「内部(実質)」への転移がステージ4Bです。インターネットで他のがんの情報を読むと混乱しやすい点なので、ご自身のステージの根拠を主治医に確認してください。
卵巣がん・卵管がん・腹膜がんは同じ病気として扱います
近年、卵巣がんの多く(特に高異型度漿液性がん)は、卵巣ではなく卵管の先端から発生すると考えられるようになりました。お腹の膜から発生する「腹膜がん」も性質がよく似ているため、卵巣がん・卵管がん・腹膜がんは同じ病気として、同じ方針で治療されます。
組織型によって性質と治療の効き方が異なります
卵巣がんは、顕微鏡で見たがん細胞の形(組織型)によっていくつかの種類に分かれ、それぞれ進み方や薬の効き方が異なります。
| 組織型 | 特徴 |
|---|---|
| 高異型度漿液性がん | 最も多いタイプ。進行した状態で見つかることが多いが、プラチナ製剤(抗がん剤)が効きやすい。BRCA遺伝子の変異やHRDがみられることが多く、PARP阻害薬の効果が期待しやすい |
| 明細胞がん | 日本では約2割を占め、欧米より多い。子宮内膜症との関連が指摘されている。抗がん剤が効きにくい傾向があり、血栓症(血のかたまり)が起こりやすい |
| 類内膜がん | 子宮内膜症との関連がある。比較的早い段階で見つかることが多い |
| 粘液性がん | ステージ4で見つかることは少ない。抗がん剤が効きにくい傾向がある |
| 低異型度漿液性がん | ゆっくり進むことが多い一方、抗がん剤が効きにくい傾向。ホルモン療法が検討されることもある |
「ステージ4」という情報だけでなく、組織型を知ることで、ご自身に合った情報を選べるようになります。
出典:日本婦人科腫瘍学会『卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン2025年版』/がん情報サービス「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん」
ステージ4は「末期がん」と同じではない
ステージ4という言葉から「末期」を連想される方は多いのですが、両者は同じ意味ではありません。末期がんとは、厚生労働省の資料では「治癒を目指した治療に反応せず、進行性かつ治癒困難又は治癒不能と考えられる状態と医師が総合的に判断した場合」とされており、病期ではなく「有効な治療手段がなくなった状態」を指す言葉です。卵巣がんステージ4では、手術・抗がん剤・維持療法など、多くの治療が行われ、その効果が期待できます。
卵巣がんステージ4の生存率【5年27.8%】と数字の正しい読み方
国立がん研究センターの院内がん登録によると、卵巣がんステージ4の5年生存率(ネット・サバイバル)は27.8%、10年生存率は14.9%です。ステージ4と診断された方のおよそ4人に1人以上が5年後も生存しているという数字で、肝臓がん(4.4%)や膵臓がん(1.6%)のステージ4と比べると高い水準です。
ステージ別の5年・10年生存率一覧
| 診断時のステージ | 5年生存率 (2014〜2015年診断例) | 10年生存率 (2012年診断例) |
|---|---|---|
| ステージ1 | 90.6% | 87.4% |
| ステージ2 | 76.6% | 61.3% |
| ステージ3 | 46.2% | 27.6% |
| ステージ4 | 27.8% | 14.9% |
5年と10年の数字は、診断年も対象の患者さんも異なる別々の集計です。ネット・サバイバルとは、がん以外の病気や事故による死亡の影響を統計的に取り除いた生存率の推計値です(実際に生存していた割合を数えた実測生存率では、ステージ4の5年生存率は27.1%)。
出典:国立がん研究センター 院内がん登録生存率集計結果閲覧システム(卵巣がん。5年:2014-2015年診断例1,270例、10年:2012年診断例489例)
ほかのがんのステージ4より生存率が高い理由
卵巣がん(特に最も多い高異型度漿液性がん)は、カルボプラチンなどのプラチナ製剤がよく効くがんです。また、お腹の中に広がったがんを手術で大きく取り除くこと(腫瘍減量手術)が生存期間の延長につながることがわかっており、ステージ4でも手術と抗がん剤を組み合わせた積極的な治療が行われます。さらに近年は、BRCA遺伝子などの検査結果に応じた維持療法で、再発までの期間を延ばせるようになりました。
この数字だけで判断してはいけない理由
第一に、統計は維持療法が普及する前のデータです。上記は2012〜2015年に診断された方の数字で、PARP阻害薬による維持療法(2019年以降に初回治療で使用可能)の効果は反映されていません。
第二に、同じステージ4でも経過は大きく異なります。4Aか4Bか、手術でがんを取り切れたか(残存腫瘍の有無)、組織型、BRCA遺伝子やHRDの有無、全身状態によって、見通しは大きく変わります。
第三に、生存率は「集団の平均像」であり、個人の余命を予言する数字ではありません。統計を大きく上回って長く過ごされている方もいれば、残念ながら早く進行する方もいます。数字は「傾向を知る資料」として使い、ご自身の見通しは主治医に確認してください。
卵巣がんステージ4の余命
医師から伝えられる「余命」は、同じような病状の患者さんの生存期間中央値(生存期間の短い順に並べたとき、ちょうど真ん中にあたる値)に基づく目安で、平均ではありません。卵巣がんでは、初回治療の効果や維持療法、再発時の治療への反応によって経過が大きく異なるため、「余命○か月」という一つの数字で見通すことは特に難しいがんです。参考として、進行卵巣がんを対象とした主な臨床試験の成績を紹介します。
臨床試験で報告された成績
| 治療内容 | 臨床試験(対象) | 主な成績 |
|---|---|---|
| オラパリブ維持療法 | SOLO-1 (BRCA変異あり・初回治療後) | 7年時点の生存率67%(プラセボ約47%) |
| オラパリブ+ベバシズマブ維持療法 | PAOLA-1 (HRD陽性・初回治療後) | 5年生存率65.5%(ベバシズマブのみ48.4%) |
| ニラパリブ維持療法 | PRIMA (初回治療後・全体) | 再発までの期間は延長。全生存期間中央値は46.6か月でプラセボ48.8か月と差はなし |
| ミルベツキシマブ ソラブタンシン(2026年9月国内承認) | MIRASOL (FRα陽性・プラチナ抵抗性の再発) | 全生存期間中央値16.5か月(化学療法12.8か月) |
出典:Di Silvestro P, et al. SOLO-1 7-year OS(J Clin Oncol 2023)/Ray-Coquard I, et al. PAOLA-1 final OS(Ann Oncol 2023)/Monk BJ, et al. PRIMA final OS(2024)/Moore KN, et al. MIRASOL(NEJM 2023)
「再発と付き合いながら長く過ごす」という考え方
進行した卵巣がんでは、初回治療でがんが見えなくなっても、多くの方がいずれ再発を経験します。しかし卵巣がんは、再発しても再び抗がん剤が効くことが多く、「治療→休薬(経過観察)→再発→再治療」を繰り返しながら何年も過ごしている方がいます。卵巣がんステージ4の見通しを考えるときは、「一度の治療で終わるかどうか」だけでなく、「治療を続けながら、どれだけ自分らしい時間を保てるか」という視点も大切です。
余命を左右する主な要素
①初回手術でがんを取り切れたか(目に見える残存腫瘍がないか)、②組織型(高異型度漿液性がんか、明細胞がんなどか)、③BRCA遺伝子変異・HRDの有無(維持療法の効果に影響)、④プラチナ製剤への反応(再発までの期間)、⑤全身状態と栄養状態、⑥腹水・胸水・腸閉塞などの症状のコントロールです。
医師から余命を伝えられたときに確認したいこと
- その見通しは、どの治療を前提にした目安ですか
- 手術で取り切れる見込みはありますか
- BRCA・HRDの検査結果によって見通しは変わりますか
- 治療がよく効いた場合、見通しはどう変わり得ますか
- いまのうちに準備しておくべきことはありますか。
卵巣がんステージ4は完治するのか
正直にお伝えすると、卵巣がんステージ4を完治(治癒)させることは容易ではありません。ただし、「完治は不可能」とも言い切れないがんです。10年生存率14.9%という数字が示すように、ステージ4と診断されても10年以上経過している方が一定の割合でいらっしゃいます。
長期生存につながりやすいのは、①手術で目に見えるがんを取り切れた、②抗がん剤がよく効いた(プラチナ製剤に感受性がある)、③BRCA遺伝子変異やHRDがあり、PARP阻害薬の維持療法が効果を発揮した、といった条件がそろった場合です。維持療法の臨床試験では、BRCA変異のある方の一部で、治療終了後も長期間再発しない状態が続いていることが報告されています。
「完治は容易ではない」という現実と、「長期にわたって病気を抑えている人が確かにいる」という現実は、両方とも本当のことです。可能性を広げるために、手術の可能性、遺伝子検査、維持療法について、主治医と十分に話し合ってください。
卵巣がんステージ4の主な症状
卵巣がんの症状は、お腹の中に広がったがんと腹水による症状が中心です。ステージ4では、これに胸水や転移先の症状が加わります。多くの症状には対処法がありますので、我慢せず主治医に伝えてください。
- お腹の張り・膨満感:腹水がたまることで起こる、卵巣がんで最も多い症状。胃が圧迫されて少ししか食べられなくなる
- 息苦しさ:胸水(ステージ4Aの特徴)や、腹水でお腹が張って横隔膜が押し上げられることで起こる
- 腸閉塞(イレウス):腹膜播種で腸が狭くなり、便やガスが出ない、吐き気・嘔吐、腹痛が起こる
- 下腹部痛・腰痛、頻尿・便秘:大きくなった腫瘍による圧迫
- 足のむくみ:リンパの流れの滞りや、血栓症によることも
- 食欲不振・体重減少・倦怠感
転移部位別の症状
| 転移部位 | 主な症状 | 対処の方向性 |
|---|---|---|
| 胸膜・胸水(4A) | 息切れ、咳、胸の圧迫感 | 胸水を抜く処置、胸膜癒着術、薬物療法 |
| 肝臓・脾臓の内部(4B) | 多くは無症状。右上腹部の違和感、黄疸(まれ) | 薬物療法、状況により手術 |
| お腹の外のリンパ節(4B) | 首や足の付け根のしこり、足のむくみ | 薬物療法、状況により手術・放射線 |
| 肺(4B) | 咳、息切れ(無症状のことも多い) | 薬物療法 |
| 脳・骨(まれ) | 頭痛・麻痺・けいれん/骨の痛み | 放射線治療(定位照射など)・手術 |
すぐ受診すべき危険なサイン
- 便もガスも出ず、お腹が張って吐いてしまう(腸閉塞の疑い)
- 急に息が苦しくなった、胸が痛い(胸水の増加、または肺血栓塞栓症の疑い)
- 片足だけが急に腫れて痛む(深部静脈血栓症の疑い。明細胞がんで特に注意)
- 尿がほとんど出ない(腫瘍による尿管の圧迫の疑い)
- 抗がん剤治療中の38度以上の発熱
- 急にお腹が張って苦しい。次の予約を待たずに病院へ連絡してください。
治療方針を決める検査(BRCA・HRD検査を含む)
卵巣がんステージ4の治療方針は、がんの広がり、組織型、遺伝子の特徴、全身状態を調べて決めます。
| 検査 | 目的・わかること |
|---|---|
| CT・MRI・PET-CT | がんの広がり(腹膜播種・リンパ節・肝臓・肺など)と、手術で取り切れる見込みを評価する |
| 腫瘍マーカー(CA125など) | 診断の補助と治療効果・再発の目安。CA125は卵巣がんで最もよく使われる |
| 胸水・腹水の細胞診 | 胸水にがん細胞があればステージ4A。腹水を抜く処置と同時に行うこともある |
| 組織検査(生検・審査腹腔鏡) | 組織型を確定する。お腹に小さな穴をあけてカメラで観察する審査腹腔鏡で、手術で取り切れるかを判断することもある |
| BRCA遺伝子検査(血液) | 生まれつきのBRCA1/2遺伝子の変異を調べる。卵巣がんの患者さんは保険で受けられる。陽性なら維持療法の選択と、ご家族への影響に関わる |
| HRD検査(腫瘍組織) | がん細胞のDNA修復の仕組みの異常(相同組換え修復欠損)を調べる。維持療法の選び方に関わる |
| がん遺伝子パネル検査 | 標準治療の終了(見込み)後などに保険適用。MSI-Highなどが見つかれば適合する薬の対象になる |
| FRα(葉酸受容体α)検査 | プラチナ抵抗性の再発時に、ミルベツキシマブ ソラブタンシンを使えるかを判断する |
中でも、BRCA遺伝子検査とHRD検査は、初回治療後の維持療法を選ぶために重要です。初回の抗がん剤治療を始める頃までに、「BRCA・HRD検査はいつ受けられますか」と主治医に確認しておくと安心です。
出典:がん情報サービス「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん 検査・治療」/国立がん研究センター中央病院「卵巣/卵管/腹膜がんの治療方針」
卵巣がんステージ4の治療の全体像【手術・薬物療法・維持療法の3本柱】
卵巣がんステージ4の初回治療は、①手術(腫瘍減量手術)、②抗がん剤による化学療法、③維持療法の3本柱で組み立てます。基本的な流れは次のとおりです。
【パターンA:手術を先に行う】手術でできる限りがんを取り除く(一次的腫瘍減量手術)→ 術後に化学療法(TC療法など、6コース程度)→ 維持療法。【パターンB:抗がん剤を先に行う】ステージ4では、最初の手術で取り切ることが難しい場合や、胸水・全身状態の問題がある場合に、まず化学療法(術前化学療法、3〜4コース程度)でがんを小さくする → 手術(インターバル腫瘍減量手術)→ 残りの化学療法 → 維持療法。
どちらを選ぶかは、がんの広がり、手術で取り切れる見込み、全身状態、施設の経験によって決まります。初回治療が終わった後は、BRCA遺伝子・HRD検査の結果と化学療法の効果をもとに、PARP阻害薬やベバシズマブによる維持療法を行い、再発までの期間をできるだけ延ばすことを目指します。再発した場合は、前回の治療からの期間(プラチナ感受性・抵抗性)に応じて次の治療を選びます。
手術(腫瘍減量手術)と術前化学療法
「卵巣がんステージ4でも手術はできるのか」という疑問に対する答えは、「できる場合が多く、手術は治療の重要な柱」です。卵巣がんでは、お腹の中のがんをできる限り取り除くこと(腫瘍減量手術)が、その後の抗がん剤の効果と生存期間に大きく影響することがわかっています。特に、目に見えるがんをすべて取り切れた場合(残存腫瘍なし)の成績が良いことが知られています。
手術の内容
一般的に、両側の卵巣・卵管、子宮、大網(胃から垂れ下がる脂肪の膜)を摘出し、腹膜播種やリンパ節転移があればできる限り切除します。がんの広がりによっては、腸の一部や脾臓などを合わせて切除することもあり、一時的または永久的な人工肛門(ストーマ)が必要になる場合もあります。手術の範囲と体への負担、得られる利益については、事前に十分説明を受けてください。
「まず抗がん剤で小さくしてから手術」が選ばれる理由
ステージ4では、最初に手術をしても取り切ることが難しい場合や、胸水・腹水が多く全身状態が手術に耐えられない場合に、まず抗がん剤(術前化学療法)でがんを小さくし、その後に手術(インターバル腫瘍減量手術)を行う方法が選ばれます。「すぐには手術できない、まず抗がん剤」と言われても、それは「手術を諦めた」という意味ではなく、手術でより確実に取り切るための戦略です。
ステージ4Bで手術が検討される場合
肝臓の内部やお腹の外のリンパ節に転移があるステージ4Bでも、転移が限られていて、すべてのがんを取り切れる見込みがある場合には、手術が検討されることがあります。手術の適応は施設の経験によっても差があるため、判断に迷う場合は、婦人科腫瘍の手術実績が豊富な施設でのセカンドオピニオンも選択肢です。
出典:日本婦人科腫瘍学会『卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン2025年版』/がん情報サービス「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん 治療」
初回の化学療法(TC療法・ベバシズマブ)
卵巣がんの初回化学療法の基本は、パクリタキセルとカルボプラチンを組み合わせた「TC療法」です。3週ごとの点滴を6コース程度行うのが標準的です。
| 治療法 | 特徴 | 主な副作用・留意点 |
|---|---|---|
| TC療法 (パクリタキセル+カルボプラチン) | 初回治療の標準。3週ごとに点滴。パクリタキセルを毎週投与する方法(dose-dense TC)もある | 脱毛、手足のしびれ、白血球減少、関節痛・筋肉痛、アレルギー反応 |
| DC療法 (ドセタキセル+カルボプラチン) | しびれが問題になる方などの選択肢 | 白血球減少、むくみ |
| PLD-C療法 (リポソーム化ドキソルビシン+カルボプラチン) | パクリタキセルが使いにくい場合などの選択肢 | 手足症候群、口内炎、骨髄抑制 |
| +ベバシズマブ | ステージ3・4ではTC療法に分子標的薬ベバシズマブを加え、化学療法後も維持療法として継続することが検討される | 高血圧、蛋白尿、出血、まれに消化管穿孔(腸に穴があく) |
抗がん剤の副作用の多くは、予防薬や支持療法で軽くできます。手足のしびれは、生活への影響が大きくなる前に伝えることで、薬の変更や減量で悪化を防げる場合があります。副作用に応じた減量・延期は「治療の失敗」ではありません。
出典:日本婦人科腫瘍学会『卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン2025年版』/がん情報サービス「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん 治療」
維持療法(PARP阻害薬・ベバシズマブ)
維持療法とは、手術と化学療法でがんが消えた、または小さくなった後に、再発までの期間をできるだけ延ばすために続ける治療です。卵巣がんの治療でこの10年に最も大きく進歩した部分で、BRCA遺伝子変異とHRD(相同組換え修復欠損)の検査結果によって選び方が変わります。
PARP阻害薬とは
PARP阻害薬(オラパリブ、ニラパリブ)は、がん細胞が傷ついたDNAを修復する仕組みを妨げる飲み薬です。BRCA遺伝子変異やHRDがあるがん細胞は、もともとDNAを修復する力が弱いため、PARP阻害薬によって修復の手段をさらに失い、増えにくくなります。
検査結果別の維持療法の選択肢
| 検査結果 | 主な維持療法の選択肢 | ポイント |
|---|---|---|
| BRCA遺伝子変異あり | オラパリブ(最長2年)、オラパリブ+ベバシズマブ、ニラパリブ | 維持療法の効果が最も大きいグループ。7年時点の生存率67%の報告 |
| BRCA変異なし・HRD陽性 | オラパリブ+ベバシズマブ、ニラパリブ | オラパリブ+ベバシズマブで5年生存率65.5%の報告 |
| HRD陰性 | ニラパリブ、ベバシズマブの継続、または経過観察 | 維持療法の効果は限定的。主治医と利益・負担を相談 |
PARP阻害薬の主な副作用は、貧血、吐き気、倦怠感、血小板減少(特にニラパリブ)、高血圧などで、まれに血液の病気(骨髄異形成症候群・急性骨髄性白血病)が起こることがあります。定期的な血液検査を受けながら、必要に応じて減量・休薬して続けます。
なお、ニラパリブの臨床試験(PRIMA試験)では、再発までの期間は延びたものの、最終的な全生存期間には差がみられませんでした。維持療法は「再発を遅らせる」効果が確かな一方、全生存期間への効果はグループによって異なります。ご自身の検査結果で期待できることを、主治医とよく話し合ってください。
出典:がん情報サービス「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん 治療」/各試験の主論文(SOLO-1、PAOLA-1、PRIMA)/各薬剤の添付文書
再発した場合の治療【プラチナ感受性・抵抗性】
進行した卵巣がんは、初回治療でがんが見えなくなっても、多くの方が再発を経験します。再発時の治療は、最後にプラチナ製剤(カルボプラチンなど)を使ってから再発までの期間によって、大きく2つに分かれます。
| 分類 | 定義 | 主な治療 |
|---|---|---|
| プラチナ感受性再発 | 最後のプラチナ製剤から6か月以上たって再発 | プラチナ製剤を含む併用療法(TC療法、PLD-C療法、GC療法など)±ベバシズマブ。効果があればPARP阻害薬の維持療法(初回に使っていない場合)。条件がそろえば再発巣を切除する手術も検討 |
| プラチナ抵抗性再発 | 最後のプラチナ製剤から6か月未満で再発 | プラチナ製剤以外の薬の単独療法(リポソーム化ドキソルビシン、毎週パクリタキセル、ゲムシタビン、ノギテカン、イリノテカンなど)±ベバシズマブ。FRα陽性ならミルベツキシマブ ソラブタンシン |
新しい薬:ミルベツキシマブ ソラブタンシン(2026年9月承認)
ミルベツキシマブ ソラブタンシン(商品名:エラヒア)は、がん細胞の表面にある「葉酸受容体α(FRα)」を目印にして抗がん剤を届ける「抗体薬物複合体(ADC)」と呼ばれる薬です。2026年9月に、FRα陽性のプラチナ抵抗性再発卵巣がんに対して国内で承認されました。臨床試験(MIRASOL試験)では、従来の化学療法と比べて全生存期間の延長が示されています。目の症状(かすみ目など)が特徴的な副作用で、眼科での確認が必要です。
再発巣を切除する手術(二次的腫瘍減量手術)
プラチナ感受性再発で、再発した場所が限られ、全身状態が良く、腹水が少ないなどの条件がそろった場合には、再発巣を手術で取り除くことで生存期間の延長が期待できることが臨床試験で示されています。対象は一部の方に限られますが、主治医に可能性を確認する価値があります。
腫瘍マーカー(CA125)だけが上がってきたとき
経過観察中に、画像や症状に変化がないのにCA125だけが上がってくることがあります。臨床試験では、腫瘍マーカーの上昇だけを根拠にすぐ治療を始めても、症状が出てから始めた場合と比べて生存期間は延びなかったと報告されています。そのため、CA125が上がっても、画像検査や症状、次の治療の選択肢を踏まえて、治療開始のタイミングを主治医と相談するのが一般的です。不安な気持ちを一人で抱え込まず、数値の意味を主治医に確認してください。
出典:日本婦人科腫瘍学会『卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン2025年版』/武田薬品工業「エラヒア」国内承認(2026年9月16日)/Moore KN, et al. MIRASOL(NEJM 2023)/Harter P, et al. DESKTOP III(NEJM 2021)/Rustin GJ, et al. MRC OV05(Lancet 2010)
治療の効果はどのように判断する?
治療の効果は、CTなどの画像検査、腫瘍マーカー(CA125)、症状の変化を組み合わせて判断します。画像では、治療前と比べてがんが消えた「完全奏効」、一定以上小さくなった「部分奏効」、大きな変化がない「安定」、大きくなった・新しい病変が出た「進行」に分けて評価します。
CA125は卵巣がんの経過をよく反映するため、治療効果の目安として毎回のように測定されます。ただし、1回の数値で一喜一憂せず、推移と画像・症状を合わせて評価します。がんが小さくならなくても、大きくならずに安定している状態を長く保つことは、それ自体が治療の成果です。
腹水・胸水・腸閉塞への対処【治療を続けるための支持療法】
卵巣がんステージ4では、腹水・胸水・腸閉塞などの症状が生活の質を大きく左右します。これらには対処法があり、症状を整えることが抗がん剤治療を続ける力にもつながります。
腹水:腹水穿刺とCART
お腹の張りが強い場合は、針を刺して腹水を抜く「腹水穿刺」でお腹を楽にします。抜いた腹水には体に必要なたんぱく質(アルブミン)が含まれるため、腹水をろ過・濃縮して体に戻す「腹水濾過濃縮再静注法(CART)」を行うこともあります(保険適用)。何より、抗がん剤ががんに効くことが、腹水を減らす最も根本的な対策です。
胸水:胸腔ドレナージと胸膜癒着術
胸水で息苦しい場合は、胸に細い管を入れて胸水を抜きます。繰り返したまる場合は、薬剤を注入して肺と胸壁をくっつけ、胸水がたまるすき間をなくす「胸膜癒着術」が検討されます。
腸閉塞:管による減圧・薬・手術
腹膜播種で腸が狭くなると、便やガスが出ず、吐き気や嘔吐が起こります。鼻から管を入れて腸の中のものを抜く、腸液の分泌を抑える薬(オクトレオチドなど)を使う、状態によっては人工肛門(ストーマ)やバイパス手術で通り道をつくるといった対処があります。「食べられない」状態が続く場合は、点滴による栄養も検討されます。
水腎症・むくみ・血栓症
腫瘍が尿管を圧迫して腎臓に尿がたまる「水腎症」には、尿管ステントや腎ろうで尿の通り道を確保します。足のむくみは、リンパの流れの滞り(リンパ浮腫)のほか、血栓症(深部静脈血栓症)が原因のこともあるため、特に片足の急な腫れや痛みは早めに受診してください。卵巣がん、特に明細胞がんは血栓症が起こりやすいことが知られています。
出典:がん情報サービス「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん 治療」(緩和・支持療法)/日本緩和医療学会ガイドライン
遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)とご家族への影響
卵巣がんの約1〜2割は、BRCA1またはBRCA2という遺伝子の生まれつきの変異が関係しています。この状態を「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」と呼びます。卵巣がんと診断された方は、BRCA遺伝子検査を公的医療保険で受けられます。
検査で生まれつきの変異が見つかった場合、それは治療(PARP阻害薬の選択)に役立つだけでなく、血縁のご家族(娘さん、姉妹、ご両親の兄弟姉妹など)も同じ変異を持っている可能性(親子・きょうだいでは50%)があることを意味します。変異を持つご家族は、乳がんや卵巣がんのリスクが高いため、早めの検診や予防的な手術などの対策を検討できます。
「家族に伝えるべきか」「娘に検査を勧めるべきか」は、とても繊細な問題です。遺伝カウンセリング(臨床遺伝専門医・認定遺伝カウンセラー)では、検査の意味、ご家族への伝え方、ご家族が受けられる対策について相談できます。検査を受ける前に遺伝カウンセリングを受けることが勧められています。なお、がんを発症していないご家族の検査は、現在は原則として自費診療です。
出典:日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構(JOHBOC)/がん情報サービス「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」
緩和ケアは診断時から受けられる
緩和ケアは「最期の医療」ではなく、がんと診断されたときから、がんへの治療と並行して受けられるケアです。お腹の張り・痛み・吐き気などの身体症状、不安や気持ちの落ち込み、ご家族の悩み、費用や仕事の相談までを、医師・看護師・薬剤師・公認心理師・医療ソーシャルワーカーなどの多職種チームが支えます。
緩和ケアは、通院中の病院(外来・緩和ケアチーム)、緩和ケア病棟(ホスピス)、ご自宅(在宅緩和ケア)のいずれでも受けられます。医療用麻薬を含む鎮痛薬は、適切に使えば寿命を縮めたり「中毒」になったりすることはありません。全国のがん診療連携拠点病院にある「がん相談支援センター」は、その病院にかかっていなくても無料で相談できます。
出典:がん情報サービス「緩和ケア」「がん相談支援センター」
卵巣がんの最新治療と臨床試験
卵巣がんは、新しい治療の開発が活発な領域です。現在は、①ミルベツキシマブ ソラブタンシンに続く新しい抗体薬物複合体(ADC)、②PARP阻害薬が効かなくなった後の治療、③免疫チェックポイント阻害薬と他の薬の組み合わせ、④手術中に温めた抗がん剤でお腹の中を洗浄する腹腔内温熱化学療法(HIPEC)などの研究が進められています。HIPECは海外の臨床試験で有望な結果が報告されていますが、国内では標準治療として位置づけられておらず、研究段階の治療です。
気になる治療を見つけたときは、「国内で承認されているか」「保険が使えるか」「臨床試験として受けられるか」を主治医に確認してください。臨床試験は、国立がん研究センター がん情報サービスの「がんの臨床試験を探す」や、国の臨床研究データベース(jRCT)で探すことができます。がん相談支援センターでも探し方の相談ができます。
出典:がん情報サービス「がんの臨床試験を探す」/臨床研究等提出・公開システム(jRCT)
標準治療の効果が乏しくなった場合の選択肢
「もう治療がない」と言われてしまうことがあります。しかし、その言葉の意味は多くの場合「保険診療の標準治療の選択肢が残り少ない」ということであり、確認・検討できることはまだ残されています。
①未使用の標準治療の確認:卵巣がんには、プラチナ製剤以外にもリポソーム化ドキソルビシン、ゲムシタビン、ノギテカン、イリノテカン、毎週パクリタキセル、ベバシズマブ、FRα陽性ならミルベツキシマブ ソラブタンシンなど、多くの薬があります。まだ使っていない薬がないかを確認します。
②がん遺伝子パネル検査:標準治療終了(見込み)で保険適用となり、MSI-Highなどが見つかれば免疫チェックポイント阻害薬(ペムブロリズマブ)など適合する薬や臨床試験の対象になることがあります。
③治験・臨床試験:新しいADCや併用療法の開発が活発です。参加には条件がありますが、開発中の治療を受けられる可能性があります。
④免疫細胞療法などの自由診療:ご自身の免疫細胞を活性化して体内に戻す治療で、標準治療との併用や、標準治療の継続が難しい場合の選択肢として検討されることがあります。公的保険適用外(全額自己負担)であり、大規模臨床試験による効果の証明は確立していないため、内容・費用・期待できることと限界を十分確認したうえで選択することが重要です。
⑤セカンドオピニオン:二次的腫瘍減量手術や臨床試験の情報は、施設によって差があります。婦人科腫瘍の診療実績が豊富な施設の意見を聞くことは、納得して治療を進めるための正当な手段です。
当院の卵巣がんステージ4に対する治療【高度活性化NK細胞療法プラス4種複合免疫療法】
日比谷内幸町クリニックは、がん免疫療法を専門とするクリニックとして、卵巣がんステージ4の患者様に「高度活性化NK細胞療法プラス4種複合免疫療法」を提供しています。患者様ご自身の血液から免疫細胞(NK細胞など)を取り出し、約2週間かけて数百倍〜数千倍に増殖・活性化させ、点滴で体内へ戻す治療法です。
【特徴1:標準治療と併用できます】抗がん剤治療・維持療法などの標準治療と併用が可能です。主治医の病院での標準治療を続けながら、当院が免疫細胞療法を担当する連携体制を取るため、転院は不要です。免疫チェックポイント阻害薬による治療中の方は、主治医と治療内容を共有したうえで、併用の時期や方法を個別に判断します。
【特徴2:副作用が少なく、QOLを保ちやすい治療です】ご自身の細胞を用いるため、抗がん剤のような強い副作用は報告されていません(一時的な発熱・倦怠感等が生じる場合があります)。採血と点滴のみの通院治療です。
【特徴3:標準治療が困難になった場合でも検討できます】「これ以上の抗がん剤は難しい」と言われた場合でも、採血が可能で全身状態が許す場合には治療を検討できます。
【治療の流れ】①専門医師による無料相談 → ②診察・採血 → ③約2週間の培養 → ④点滴投与 → ⑤経過観察・効果判定。標準治療のスケジュールに合わせて計画を調整します。
【費用・リスクについて】本治療は公的医療保険が適用されない自由診療です(費用は治療内容・回数により異なります。詳しくは治療費用のページをご覧ください)。副作用としてまれに発熱・倦怠感等が生じることがあります。効果には個人差があり、効果を保証するものではありません。
診断されたら:主治医に確認したいこと・ご家族ができること
【主治医に確認したいこと】
- ステージは4Aですか、4Bですか。その根拠は
- 組織型は何ですか
- 手術で取り切れる見込みはありますか。手術と抗がん剤のどちらを先に行いますか
- BRCA遺伝子検査・HRD検査はいつ受けられますか
- 維持療法の予定と、期待できる効果は
- 腹水・胸水などの症状にはどんな対処ができますか
- 再発した場合の次の選択肢は
- 治験の情報はありますか
- 遺伝カウンセリングを受けられますか
- 費用の目安と使える制度は
【ご家族ができること】①診察に同席してメモを取る(本人は動揺して聞き取れないことが多い)、②腹水でお腹が張って食べられない時期は「少しずつ、食べられるものを」を手伝う、③足のむくみ・息苦しさ・便が出ないなど、急を要する変化に気づいたら医療チームへの連絡を促す、④遺伝の話題は、ご本人の気持ちを尊重しながら、遺伝カウンセリングの場も活用して一緒に考える、⑤ご家族自身も緩和ケア・相談支援の対象であることを忘れず、一人で抱え込まない。
治療と生活:副作用・卵巣欠落症状・仕事・医療費
【副作用との付き合い方】抗がん剤の脱毛は治療終了後に回復します。手足のしびれは長引くことがあるため、ボタンが留めにくい、つまずきやすいなどの変化は早めに伝えてください。維持療法の飲み薬では、貧血や吐き気、だるさが出ることがあり、定期的な血液検査で確認しながら続けます。体温・体調・食事量を簡単に記録しておくと、受診時に正確に伝えられます。
【卵巣欠落症状(手術による更年期症状)】閉経前に両側の卵巣を摘出すると、急に女性ホルモンが減り、ほてり・発汗・気分の落ち込み・骨密度の低下などが起こることがあります。組織型によってはホルモン補充療法を検討できる場合もあるため、主治医に相談してください。
【食事】「これを食べればがんが治る」という食品はありません。腹水で胃が圧迫されている時期は、少量ずつ回数を分けて、食べられるものをとることを優先します。腸閉塞の危険がある場合は、繊維の多い食品や消化しにくい食品を控えるよう指示されることがあります。
【仕事】抗がん剤治療の多くは外来で受けられ、維持療法の飲み薬は自宅で続けられます。治療スケジュールに合わせた勤務調整について、がん相談支援センターで両立支援の相談ができます。
【医療費】保険診療には高額療養費制度が適用され、1か月の自己負担には上限があります。維持療法の薬は長期間続くため、限度額適用認定証(マイナ保険証の利用で不要な場合あり)や、医療費控除、傷病手当金、障害年金、介護保険(40歳以上で末期がんと診断された場合)などの制度も確認しましょう。医療ソーシャルワーカーに早めに相談してください。
出典:がん情報サービス「がんとお金」「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん 療養」
卵巣がんステージ4に関するよくある質問(FAQ)
卵巣がんステージ4は末期がんと同じですか?
いいえ、同じではありません。末期がんとは「治癒を目指した治療に反応せず、治癒困難と医師が判断した状態」を指す言葉で、病期とは別の概念です。卵巣がんステージ4では、手術・抗がん剤・維持療法などの治療が行われ、効果が期待できます。5年生存率は27.8%で、ほかの多くのがんのステージ4より高い水準です。
卵巣がんステージ4の生存率はどのくらいですか?
国立がん研究センターの院内がん登録によると、卵巣がんステージ4の5年生存率(ネット・サバイバル)は27.8%(2014〜2015年診断例)、10年生存率は14.9%(2012年診断例)です。この数字には、PARP阻害薬による維持療法が普及した後の効果は反映されていません。個人の見通しは、手術の結果・組織型・遺伝子の特徴などで大きく異なります。
卵巣がんステージ4の余命はどのくらいですか?
一律には決まりません。卵巣がんは抗がん剤が効きやすく、再発しても治療を繰り返しながら長く過ごしている方がいるため、「余命○か月」という一つの数字で見通すことが特に難しいがんです。手術でがんを取り切れたか、組織型、BRCA遺伝子やHRDの有無、プラチナ製剤への反応などで見通しは大きく変わります。
卵巣がんステージ4で完治する確率は?
完治の確率を示す確かな数字はありませんが、10年生存率は14.9%で、ステージ4と診断されても10年以上経過している方が一定の割合でいます。手術で目に見えるがんを取り切れた、抗がん剤がよく効いた、BRCA変異やHRDがあり維持療法が効果を発揮した、といった条件がそろうと長期生存につながりやすいとされています。
卵巣がんステージ4でも元気に過ごしている人はいますか?
はい、いらっしゃいます。卵巣がんは抗がん剤が効きやすく、治療でがんが小さくなると腹水などの症状も改善し、仕事や家事を続けながら通院治療を受けている方もいます。維持療法の飲み薬を続けながら日常生活を送っている方も多くいます。ただし経過は人によって大きく異なるため、ご自身の見通しは主治医に確認してください。
卵巣がんステージ4でも手術はできますか?
できる場合が多く、手術は治療の重要な柱です。卵巣がんでは、お腹の中のがんをできる限り取り除く腫瘍減量手術が生存期間に影響します。最初に取り切ることが難しい場合は、まず抗がん剤でがんを小さくしてから手術を行う方法(術前化学療法+インターバル腫瘍減量手術)が選ばれます。
「まず抗がん剤で小さくしてから手術」と言われました。手術は諦めたということですか?
いいえ。術前化学療法は、手術でより確実にがんを取り切るための戦略です。ステージ4では、胸水や広い範囲の腹膜播種があって最初の手術で取り切ることが難しい場合や、全身状態が手術に耐えられない場合に選ばれます。抗がん剤を3〜4コース行った後、効果を確認して手術を検討するのが一般的です。
維持療法とは何ですか?
手術と化学療法でがんが消えた、または小さくなった後に、再発までの期間をできるだけ延ばすために続ける治療です。PARP阻害薬(オラパリブ、ニラパリブ)という飲み薬や、ベバシズマブという点滴薬が使われます。BRCA遺伝子変異やHRDの有無によって、効果が期待できる薬と組み合わせが変わります。
BRCA遺伝子検査・HRD検査は受けるべきですか?
はい、ステージ3・4の卵巣がんでは、維持療法を選ぶために重要な検査です。卵巣がんの患者さんはBRCA遺伝子検査を保険で受けられます。BRCA変異がある場合は、ご家族にも同じ変異がある可能性があるため、検査前に遺伝カウンセリングを受けることが勧められています。検査の時期は主治医に確認してください。
卵巣がんステージ4は再発しやすいですか?
進行した卵巣がんは、初回治療でがんが見えなくなっても、多くの方がいずれ再発を経験します。ただし再発しても、前回のプラチナ製剤から6か月以上たっていれば再びプラチナ製剤が効くことが多く、6か月未満でも別の薬や新しい薬(ミルベツキシマブ ソラブタンシンなど)の選択肢があります。
腫瘍マーカー(CA125)が上がってきました。すぐに治療が必要ですか?
必ずしもすぐではありません。臨床試験では、CA125の上昇だけを根拠にすぐ治療を始めても、症状が出てから始めた場合と比べて生存期間は延びなかったと報告されています。画像検査、症状、次の治療の選択肢を踏まえて、治療開始のタイミングを主治医と相談するのが一般的です。
腹水がたまってお腹が苦しいです。どうすればいいですか?
腹水を針で抜く腹水穿刺でお腹を楽にできます。抜いた腹水から栄養分を戻す腹水濾過濃縮再静注法(CART)も保険で受けられます。根本的には、抗がん剤ががんに効くことで腹水が減ることが期待できます。お腹の張りで食べられない状態を我慢せず、早めに主治医に相談してください。
卵巣がんは遺伝しますか?娘への影響が心配です。
卵巣がんの約1〜2割は、BRCA1/2遺伝子の生まれつきの変異(遺伝性乳がん卵巣がん:HBOC)が関係しています。ご本人に変異があれば、娘さんが同じ変異を持つ確率は50%です。変異を持つ方は早めの検診や予防的な手術などの対策を検討できます。遺伝カウンセリングで、ご家族への伝え方も含めて相談できます。
標準治療が効かなくなったらどうすればいいですか?
未使用の薬(リポソーム化ドキソルビシン、ゲムシタビン、ノギテカン、ミルベツキシマブ ソラブタンシンなど)の確認、がん遺伝子パネル検査、治験・臨床試験への参加、免疫細胞療法などの自由診療といった選択肢を順番に整理します。「もう治療がない」と言われた場合も、確認・検討できることは残っています。セカンドオピニオンも有効です。
免疫細胞療法は標準治療と併用できますか?
当院の高度活性化NK細胞療法プラス4種複合免疫療法は、抗がん剤・維持療法などの標準治療を妨げにくい治療法であり、併用が可能です。主治医の病院での治療を続けながら通院で受けられます。なお本治療は公的保険適用外の自由診療です。詳しくは無料相談でご説明します。
仕事を続けながら治療できますか?
抗がん剤治療の多くは外来で受けられ、維持療法の飲み薬は自宅で続けられるため、勤務を調整しながら仕事を続けている方もいます。脱毛やしびれ、疲れやすさなどは時期によって変わるため、治療スケジュールに合わせて休みを取るなどの工夫が役立ちます。がん相談支援センターで両立支援の相談ができます。
まとめ:卵巣がんステージ4は、治療で長く付き合える可能性のあるがんです
卵巣がんステージ4は進行した状態であり、再発しやすいという現実もあります。しかし、卵巣がんは抗がん剤が効きやすく、5年生存率は27.8%、10年生存率は14.9%と、ほかの多くのがんのステージ4より高い水準です。手術・化学療法・維持療法の3本柱の治療に加え、再発しても治療を繰り返しながら長く過ごしている方がいます。
大切なのは、①ステージだけでなく組織型・手術の見込み・遺伝子の特徴を知ること、②BRCA・HRD検査を受けて維持療法の選択肢を確認すること、③腹水・胸水などの症状には対処法があると知り、我慢しないこと、④再発時の選択肢(二次治療・新薬・治験・免疫細胞療法・セカンドオピニオン)を早めに整理しておくことです。
日比谷内幸町クリニックでは、卵巣がんステージ4の患者様とご家族を対象に、専門医師による無料相談を実施しています。「標準治療と併用できる治療を探している」「これ以上の治療は難しいと言われた」という方は、お一人で悩まず、お気軽にご相談ください。(受付時間:平日9:00〜17:00/お電話・WEBフォームで受付)
参考文献
- がん情報サービス 卵巣がん・卵管がん・腹膜がん 治療
- 国立がん研究センター中央病院 卵巣/卵管/腹膜がんの治療方針
- 国立がん研究センター がん統計(卵巣)
- 院内がん登録生存率集計結果閲覧システム(卵巣がん)
- 日本婦人科腫瘍学会『卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン2025年版』(金原出版)
- 主要臨床試験:SOLO-1(7年OS)、PAOLA-1(最終OS)、PRIMA(最終OS)、MIRASOL、DESKTOP III、MRC OV05
- 武田薬品工業「エラヒア」国内製造販売承認(2026年9月16日)/日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構(JOHBOC)
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